言葉は絵の具 <言葉は魔法・003>
星野廉
2020/12/01 07:57
言葉は魔法。
言葉は色。
言葉はパレット。
言葉は絵の具。
この言葉は何色?
母音は絵の具。
A は黒。
E は白。
I は赤。
U は緑。
O は青。
恋はみずいろ。
もとはフランス語なんですね。歌よりもムード音楽とかイージーリスニングとして、曲がよく知られています。「恋は青」ではなくて「恋は水色」ではなくて「恋はみずいろ」としたところが、すごくニクい。うまいなあ。日本語の語感を熟知した訳詞だと思います。こういう名曲はちゃんとウィキペディアでも取り上げられていてうれしいです。へえーっと思うことがいろいろ書かれていて勉強になりました。
*
A は黒。
E は白。
I は赤。
U は緑。
O は青。
これはフランスの詩人アルチュール・ランボーの詩の一部です。お勉強なさりたい方は、「母音の色(ランボーの詩に寄せて)」という素晴らしい解説をお読みください。私も読みましたが、とても勉強になりましたよ。もっとフランス語をきちんと勉強しておけばよかったとも思いました。
母音を色にたとえているのですが、きれいですね。美しいです。すごい感性の持ち主だったんですね。イメージが膨らんでしあわせな気持ちになります。言葉を使えば、こんな素晴らしいことを言えるんです。言葉を使えば、何でも言えるんです。
言葉は色。
母音は絵の具。
子音は筆さばき。
*
言葉は魔法。
言葉は白。
言葉は黒。
言葉は灰色。
言葉を使えば何とでも言えます。黒を白と言いくるめることも十分可能です。ポストトゥルースとか言われるいまの世界では、どう考えてもフェイクな奴が「ふぇいくにゅーす」なんて怒鳴っています。いや、いました。怒鳴奴、ゆー・あー・ふぁいあど。
あと、「怪文書の一種ではないでしょうか」とか言っていた元黒ーにん(苦労人に悪いです)がいまではアイムソーリーだったりしますね。とは言え、ぜんぜん謝罪しない人なんですけど……。こういうシュールで不条理で荒唐無稽なことが世界各地でマジに起きています。
代議制が破綻して民主主義が限りなく合法的に独裁政治に近づいていく。ジョージ・オーウェルの『1984年』に出てくるニュースピーク(新語法・Newspeak)(※ニュースのピークじゃありませんよ)とそっくりの現象が、この国だけでなくあちこちの国で起こっているようです。言葉が危機にさらされています。私たちみんなの大切な言葉が変質してきているのです。きな臭い話はストレスになって体調に悪い影響をおよぼすので、この辺にしておきます。
言葉はフェイク。
言葉は似せもの。
言葉は偽物。
言葉は新語法。
言葉は魔物。
いつの世も ぐれた子たちに 怒鳴る奴
落ち着けと つぶやき返す ぐれた讃
グレタ・トゥーンべリさんを皮肉ったトランプ大統領。彼女の静かな「反撃」に称賛集まる
グレタ・トゥーンベリさんが国連で行った怒りのスピーチとともに、トランプ大統領との静かな攻防に世界中が注目している。
www.huffingtonpost.jp
グレタ・トゥーンベリさん、トランプ大統領に「落ち着け!」「アンガーマネジメントを」⇒過去にトランプ氏が…
「集計を止めろ!」とツイートしたトランプ大統領に向けたトゥーンベリさんのセリフが話題です。理由があります。
www.huffingtonpost.jp
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言葉は魔物。
何だか変な終り方になりましたね。きな臭い話をすると、こんな終り方によくなります。こういうのを、記事の無地着と言います。要するに失敗なんです。記事の不時着。愛の不時着……。言葉は不時着……。だめだめ。
邪念を振り払いましょう。
言葉は色。
言葉はパレット。
この言葉は何色?
言葉は絵の具。
言葉は世界を彩る絵の具。
人は絵の具をのせて混ぜあわせるパレット。
言葉はクレヨン。
言葉はパステル。
世界は白い画用紙。
世界はカンバス。
世界はあなたの手と絵の具で塗られるのを待っている真っ白な画用紙。
世界はあなたとペンで書かれるのを待っている白い紙。タブラ・ラサ。
世界という白い紙が、あなたを待っている。
さあ、書きましょうか。
さあ、描きましょう。
言葉は魔法。
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