言葉はジャズ <言葉は魔法・007>
星野廉
2020/12/07 07:55
言葉は魔法。
ジャズのように書きたい。
ジャズのように言葉を綴りたい。
ジャズのように文章を書きたい。
ジャズのような文章を書きたい。
ジャズについて詳しいわけではぜんぜんありません。ジャズをよく聞いているわけでもないです。頭の中に、漠然とあるジャズのイメージに憧れている。それは確かです。
私のジャズに対するイメージとは、即興、自由、連想、直観、変調、転調、オートマティズムといったものです。とりとめがありません。でも、そうしたものたちは私にとっては大切なものなのです。ぜひ身につけたいスキルだとも言えます。
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ポンと言葉を投げる。言葉を放る。言葉を出す。キーを叩く。すると、次の言葉が出る。音が出る。文字が出る。現われるのではない。そんな曖昧でよそよそしいものではない。出るのだ。
どこから? それは分からない。と言うか、どうでもいい。とにかく出てくれればいい。そうなればうれしい。そんなことが起きれば、どんなに楽しいだろう。
横着なのかもしれない。努力を惜しんでいるのかもしれない。虫のいい話だと言われれば返す言葉がない。けれど、それを求めている気持ちに偽りはない。これで失敗したとしても後悔するつもりはない。
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即興で、出たとこ勝負で書こうというのですから、何かを調べたり、引用したりする気はありません。曖昧な部分を難しい言葉を使ってお茶を濁すとか、物知りを装ってよく知りもしない用語を振りかざす書き方もしたくありません。
固有名詞を出すのにも慎重でありたいと考えています。ある固有名詞を知っていると誇示したり、ある固有名詞を出したいがために、何かの話題を見つくろって書く。そうした書き方とも無縁でいたいです。書きたいテーマがあり、それを書く過程で固有名詞を出すのなら問題はありません。固有名詞ほど虎の威を借る狐の威になりやすいものはないと思います。
(偉そうなことを書いていますが、この<言葉は魔法>シリーズではさかんに引用をし、難しい言葉や用語を出し、固有名詞をじゃんじゃん出しています。口先だけで説得力のない文章ですね。とは言え、この連載は気に入っているのでちゃんと書き続けます。上で書いたことは理想であり目標ということで、有言不実行をどうかお許しください。)
連想だけを頼りに直観的に、ぽんぽんと言葉を投げていくイメージ。それが私の頭の中にあるジャズです。
私のジャズ。
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ポンと言葉を投げる。
言葉を放る。
言葉を出す。
キーを叩く。
すると、次の言葉が出る。
音が出る。
文字が出る。
現われるのではない。
そんな曖昧でよそよそしいものではない。
出るのだ。
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言葉は魔法。これがおまじないです。言葉に出てもらうためのおまじない。
言葉は宝石。ぽんと投げてみます。でまかせで出た言葉。言葉は宝石だと思います。嘘偽りのない気持ちです。「ほうせき」と音読みしているのですから、漢語系の言葉でしょうか。漢語を見るとやまとことばに直す癖のある私は「たま」とつぶやいてみます。
言葉は玉。出ました。宝石は玉(たま・ぎょく)とも言いますね。ふむふむ。なるほど。漢字ではこうなりますね。
言葉は珠。「たま」を変換すると出てきました。キーを叩いて出てくるなんてピアノみたい。キーボードですから当然ですね。
言葉は球。変換すると出てきました。言葉は球体、なんて思いましたが、ズレていきそうなので、とどめます。ときには抑えるということでしょうか。
言葉は弾。あー、そう言えば、これもたまですね。たまげた。こういう邪念とかノイズは抑えます。私の悪い癖。
*
言葉はたま。ひらがなで仕切り直しましょう。
言葉は魂。変換を続けると、これが出ました。「たましい」とも読みますね。これも、「たま」。言霊という言葉が頭に浮かびます。
言葉は霊。出ました。これも「たま」。言霊さんが働いてくれているのかも。そう考えましょう。言霊さんがついていてくれると思うと、励まされます。勇気づけられます。
言葉は環。あらら、これが出ましたよ。「たまき」という人の名前を思い出しました。この漢字で「たまき」と読むのです。いい名前ですね。ユニセックスなところがいい。「ひろみ」「あおい」「いおり」みたいに男女両方につける名前では、「まこと」が好きです。真、真琴、誠、麻琴……。自作の小説でも使うことがあります。環という字で連想するのは円環です。円環で思い出すのは……。長くなってきましたね。悪い癖です。抑えましょう。
言葉は賜。これも「たま」。「たまもの・賜物」じゃないですか。有り難い言葉。たわまる、ですね。
言葉は多摩。これも「たま」にはちがいないけど……。あ、そうか。多磨霊園ですか。まさか。そういうわけでもないでしょうが、こういうのは抑えたほうがいいのかもしれません。
言葉は田間。そうですか。この辺でとめましょう。
*
私はピアノが弾けません。あ、偶然に「弾」が出た……。気にしない。
でも、こうやってパソコンのキーボードを叩くことはできます。叩いて、言葉を出しているのです。これも一種のジャズであり、演奏ではないでしょうか。キーボードのキーに身を任せる。いや、変換機能に身を任せているのかもしれません。機械に自分を預けているとも言えそうです。
私は楽器が演奏できません。だいいち、楽譜が読めないのです。それに、たぶん、音痴です。人前で歌った経験は学校の音楽の授業以外にほとんどありません。交際がきわめて薄い人間なので、人と一緒にカラオケを楽しむなんてまずないですね。せいぜい、人が歌うのを聞いているくらい。でも、こうやってひとりでPCのキーボードを叩いて言葉と文章を綴れるのですから、これで満足しています。これ以上の贅沢があるでしょうか。
私は中途難聴者で三十五歳くらいから補聴器をしています。聞こえは悪くなる一方なのですが、いまはYouTubeというものがあるので、それなりに音楽を楽しんでいます。
ピアノ > 管楽器 > 弦楽器。
ピアノの音が比較的聞き取りやすいので――ジャズではありませんが――弾き語りの曲をよく視聴しています。これが好きです。
次もジャズではありませんが、好きです。年を重ねたビリー・ジョエルはとても格好いいと思います。この「2006年11月30日ビリー・ジョエル、「イン・コンサート2006」東京ドーム・ライブ」の動画が気に入っています。
音楽は賜物。
音楽は贈り物。
音楽は魔法。
*
言葉は魔法。
ジャズのように書きたい。
ジャズのように言葉を綴りたい。
ジャズのように文章を書きたい。
ジャズのような文章を書きたい。
私のジャズ。
言葉はジャズ。
言葉はアドリブ。
言葉はautomatisme。
言葉はimprovisation。
ここまでの文章を読んでみました。ジャズもどきのことができた気がします。今回はこれでいいかな、と思います。ジャズのスキルを磨きたいです。少しずつ練習していきます。
あ、私の考えるジャズの話です。それに、言葉のジャズの話です。言葉のジャズは、私にとって音楽みたいなものだと言えます。
何だか、ほんわかしたいい気持ちです。肩に力が入っていないからかもしれません。
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今回のキャスト(サイコロを振って出た言葉の出演者たち):
言葉は魔法。
言葉は宝石。
言葉は玉。
言葉は珠。
言葉は球。
言葉は弾。
言葉はたま。
言葉は魂。
言葉は霊。
言葉は環。
言葉は賜。
言葉は多摩。
言葉は田間。
私のジャズ。
あなたのジャズ。
あなたのジャズを聞かせてください。
あなたのジャズを読ませてください。
音楽は魔法。
言葉は魔法。
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