言葉は魔術 【言葉は魔法・010】
星野廉
2020/12/12 08:05
言葉は魔法。
言葉は人を動かす。
言葉はスキル。
言葉はテクニック。
言葉は技術。
言葉は魔術。
言葉しかない。
言葉がすべて。
言葉だけ。
言葉だけの人。
世代的に、ちょっとの差でビートルズには乗り遅れた感じの私は、Bee Gees (ビージーズ)が大好きです。小難しくなくて楽観的な雰囲気が魅力だと思っています。
You think that I don't even mean
A single word I say
It's only words, and words are all
I have to take your heart away
それはさておき、この Words (ワーズ)という曲では、君に僕の思いを伝えられるのは言葉しかない、君の心をつかんで奪うには言葉しかない、と歌っています。いささか必死なくらい、です。文字通りに取ってもいいのですけど、過去の言動から恋人にあまり信用されていない、ちゃら男のくどき文句にも聞こえます。もしも、この妄想どおりなら、こんな男に心をつかまれ奪われてはいけませんね。
The Bee Gees - Words
こんばんは、古い音楽をお届けする音楽文章ラジオのお時間がやって参りました。進行は、名久井翔太です。どうぞよろしく。 今日は
british-791.blogspot.com
言葉しかない。
言葉がすべて。
言葉しか人を動かせない。
この種の言葉をよく見聞きしませんか? 一生懸命さだけは伝わってきます。人を口説くとか、説得する際には手頃な表現かもしれません。口当たりがよくて、きれいごとにも聞こえます。いわゆる美辞麗句というやつです。それなりに力強いし。
口だけの人っていますよね。言葉で説得されたり告白されたら、その人のおこないをよく見る必要があります。言葉だけを信用するわけにはいきません。
お断りしておきますが、上で紹介した、Bee Gees の Words が巧言令色、つまり優しげな表情を装って巧みに言葉を操っている男性の歌だと言っているわけではありません。そうも取れなくもないと言っているだけです。
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私は Bee Gees の大ファンです。とりわけ好きなのは、How Deep Is Your Love です。悲しい時なんかに、無意識のうちにこの曲を口ずさんでいる自分がいます。
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話を戻します。
嘘くさい言葉ってありますね。さらに言えば、世界は嘘に満ちています。何もかも疑おうとは言いません。ときには、言葉を前にして眉に唾をつけることが必要ではないでしょうか。とは言え、言葉に罪はありません。
言葉で巧むのは人です。言葉を使って人を操ろうとするのは人です。言葉に罪はありません。
たとえば、白を黒と言いくるめるとか、鷺(さぎ)を烏(からす)と言いくるめるようなテクニックがあります。政治、商売、取り引き、交渉、プレゼン、広告、宣伝、プロパガンダ、行政や政府の広報、詐欺……。もちろん、文芸も例外ではありません。
詩人、ビジネスマン、コピーライター、小説家、公務員、政治屋、詐欺師の間を行き来したり、肩書きがかぶる例は古今東西多々ありますね。
言葉に関する技術や修辞(レトリック)はより洗練されて巧妙になってきています。手法は多岐にわたります。ここで私ごときが扱えるようなものではありません。きな臭い話になりそうなので、この辺でやめておきますね。
言葉はスキル。
言葉はテクニック。
言葉は技術。
言葉は魔術。
君に僕の思いを伝えられるのは言葉しかない、君の心をつかんで奪うには言葉しかない。
第三帝国の言語。 ←
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美しい曲を紹介します。
やはり、Bee Bees による Melody Fair です。映画の主題歌になった曲でした。お聞きになると分かると思いますが、歌詞がとても綺麗に聞こえます。耳に快く聞こえるのです。
なぜでしょう?
一つには韻を踏んでいる言葉に満ちているからです。韻については、ややこしいので、詩や歌詞の中で似た発音の言葉があちこちに出て来るくらいで理解してもいいと思います。詳しくは、押韻、頭韻、脚韻という、ウィキペディアの解説で勉強してくださいね。
韻は東西関係なく古来から詩に用いられてきましたね。これは言葉を美しく聞こえるようにするテクニックつまり技術なのです。
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簡単な例を見てみましょう。
セブン
イレブン
いいきぶん
口調がいいですね。脚韻でしょうか。耳にすっと入りすっと馴染む。魔法のように、お客様がどんどんお店に入るわけです。イッツ・ア・マジック。
スカッと
さわやか
コカコーラ
耳に快いですね。頭韻でしょうか。じつに爽やか。魔法のように清涼飲料水が売れるわけです。イッツ・ア・ミラクル。
定型詩の韻はもっと複雑みたいですけど、歌詞やキャッチフレーズやコピーなどでの韻は簡単に考えていいと思います。要するに、似た発音(母音も子音もです)の言葉がいい具合に散らばっているのです。この「いい具合に」がポイントです。いい具合に散らばっていると快く耳に響くわけです。
Bee Bees による Melody Fair でしたね。忘れそうになりました。お楽しみください。
Who is the girl with the crying face
looking at millions of signs?
She knows that life is a running race,
Her face shouldn’t show any line.
Who is the girl at the window pane,
watching the rain falling down?
Melody, life isn’t like the rain ;
its just like a merry go round.
Melody Fair won't you comb your hair?
you can be beautiful too.
Melody Fair, remember you’re only a woman.
Melody Fair, remember you’re only a girl. ah...
上に歌詞を部分的に引用しましたが、ご覧のように似た発音の言葉がいい具合に散らばっていますね。また、Melody Fair という美しく響く文字通りメロディのような名前が繰り返されます。女の子の名前自体が詩なのです。 言葉の音への細心の心配りが魔術的な効果をあげます。イッツ・ア・マジック。
韻。
リフレイン。
こうした工夫が言葉を美しく聞こえるように、または見えるようにする方法であり、レトリック(修辞法)つまり技術なのです。韻なんて、まだかわいいものです。手法は多岐にわたります。巧んだり仕組んだりするわけですね。人を動かす技術の一つです。一種の魔法とも言えるでしょう。
レトリックはトリック。
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言葉はスキル。
言葉はテクニック。
言葉は技術。
言葉は魔術。
上の言葉の連なりを見てください。さっき、Melody Fair を紹介する直前にお見せしたのと同じ言葉の羅列なのですが、ここでは綺麗に見えませんか。素敵なものに感じられませんか? もしそうなら、なぜでしょう? 考えてみませんか?
とは言え、私が答えを知っているわけではありません。いろいろな考えがあると思いますが、たとえば、「文脈」とか「両面」とか「印象」という言葉を使うと説明できるかもしれません。
言葉しかない。
言葉がすべて。
言葉だけ。
言葉、恐るべし。
言葉は魔法。
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