言葉は絆 <言葉は魔法・014>

星野廉

2020/12/22 08:03


 言葉は魔法。

 言葉はもどかしい。

 言葉は伝わらない。


 でも言葉は魔法だから……。

 素晴らしい魔法のはずだから……。


        *


 最初に動画を紹介しますが、これは後で視聴していただいてもかまいません。





 失語症――。決して珍しい障害ではありません。みなさんのまわりにも、この症状が出てたためにリハビリ中の人がいるのではないでしょうか。私の知り合いにもいます。脳卒中(脳血管障害)による脳の損傷によって起こる場合が多いですね。失語症というと、文字通りに意味を取って、単に話せなくなる病気(障害)というイメージをいだきがちです。


 必ずしもそうではないようです。以下に資料を挙げます。


 大脳(たいていの人は左脳)には、言葉を受け持っている「言語領域」という部分があります。失語症は、脳梗塞や脳出血など脳卒中や、けがなどによって、この「言語領域」が傷ついたため、言葉がうまく使えなくなる状態をいいます。つまり、失語症になると、「話す」ことだけでなく、「聞く」「読む」「書く」ことも難しくなるのです。


(「[15] 脳卒中と言葉の障害 - 国立循環器病研究センター」から引用)

[15] 脳卒中と言葉の障害 | 脳 | 循環器病あれこれ | 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス

国立循環器病研究センターの循環器病情報サービスサイトでは心臓病や脳卒中などの循環器病の症状や原因、予防や治験についての情報

www.ncvc.go.jp

 要するに、言葉がうまく使えなくなる、つまり話す、聞いて理解する、読んで理解する、そして書くことにも困難が生じるのです。これはもどかしいにちがいありません。さぞかし、いらいらするでしょう。言葉は悪いですが、生き地獄ではないでしょうか。自分がそんな状態になれば、悲しくて消えてしまいたくなるだろうと思います。


 noteで活動している人たちにとって、言葉はとくに大切なものではないでしょうか。上のような症状が出たとしたなら、noteで記事を投稿することも、記事を読むことすらほとんどできなくなるのです。死に物狂いでリハビリに励むしかないでしょう。


 生きていながら、言葉を失う、考えようによっては言葉を奪われることがあるのですね。生きている分だけ、つらいにちがいありません。


 健常な私たちが、言葉が伝わらないとか通じないと嘆くのとは次元が異なる深刻な事態のようです。これこそまさに、想像を絶する苦しみではないでしょうか。


最後に失語症の患者さんに接するときに、家族や周囲の人が心掛けておきたい6つのポイントをまとめてみます。


1.話しかけるときは、ゆっくりとわかりやすい言葉遣いで話しかけましょう。

2.話しかけるときには、やさしい漢字や絵、図などを書いたり、ジェスチャーや実物などを示したりすると、理解されやすいでしょう。

3.言葉が出にくいときは、「はい」「いいえ」で答えられるよう質問を工夫しましょう。患者さんの言いたいことを推測して、考えられる答えを書いて示すことも有効です。

4.言葉が出ないときは、せかさないで少し待ってあげます。ただし、待ち過ぎると、かえって患者さんのストレスになります。適当なところで、「~のことですか?」などと助け船をだしてあげましょう。

5.患者さんの言い間違いを、とがめたり、笑ったり、何度も言い直しをさせたりすることは避けてください。

6.失語症の患者さんは、五十音表で、うまく言葉がつづれないことが多いので、使わないでおきましょう。


 家族でも恋人でも友達でもいいです、もしあなたの大切な人が、上で述べた障害を負ったと想像してみてください。その人とは言葉がうまく通じなくなるのです。悲しいですね。言葉は私たち一人ひとりをつなぐ絆だからです。


 これはどういうことなんだ。私の大切な人にいったい何が起こったんだ。どうやら言葉が理解できない人間になってしまったらしいけど、そもそも言葉って何なんだ――。


 以下に紹介するのは、そんな気持ちの歌です。





 


Chris Medina - What Are Words

*Chris Medinaはアメリカン・アイドル第10シーズンに出場し、その後このシングルをリリースした。Ch

luckyyygirlll.blogspot.com

『アメリカン・アイドル出場者の感動物語、その想いを歌にした感涙の曲!泣きます!』

My good friend just told me about the story of this AMAZING g

ameblo.jp


 What are words で始まるさびの部分の歌詞の意味を、私なりに解釈してみます。


What are words

If you really don't mean them when you say them?

What are words

If they're only for good times, then they don't?


 交通事故で脳に大きな損傷を受けた婚約者が、うまく言葉を使えない状態になっている。彼女が何か言葉を口にしても、言葉が意味をなさない。言葉と意味が離れてしまっている。僕の言葉も彼女には通じない。でも、「愛している」と僕が言えば、それは愛しているってこと。それ以上でもそれ以下でもない。


        *


 以上は極端な例ですが、言葉は口にした瞬間に、話した人から離れていきます。「話す」は「放す」であり「離す」である。これが言葉の最大のもどかしさだと常々思っています。私たちは日々、こういう現実を生きているのです。もどかしい。いらいらする。争いが起きる。


 そんな私たちをつないでいるのが言葉なのです。


 言葉はもどかしい。

 言葉は離れる。

 言葉は気まぐれ。

 言葉はいい加減。

 言葉は不実。

 言葉は裏切る。


 言葉は魔法だから。


 いいえ、それはちがいます。気まぐれで、いい加減で、不実で、裏切るのは人間です。言葉を裏切るのは人なのです。他にいますか? いませんよね。


 言葉に罪はない。

 言葉はそこにある。

 言葉はある。

 言葉はあるだけ。

 言葉は人とともにある。

 人がいなくなれば、言葉もいなくなる。


 言葉は人の友達。

 言葉は誰にとっても相棒。

 言葉は大切な存在。


 言葉は人と人をつなぐ絆。

 言葉は絆。


 言葉は魔法。



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