マリモの日、作業服の日、八百屋お七の日、風信子忌

2021/03/29 08:11


今日は何の日。


        *


マリモの日――。


マリモというと森茉莉を連想します。森鴎外の娘さんなのですが、この人の小説を高校生の頃に読みました。短編の『枯葉の寝床』と『恋人たちの森』と『日曜日には僕は行かない』が好きでした。やおいとかBLの走りみたいな傾向の作品です。『父の帽子』が読みかけで書棚に眠っています。


森鴎外のお孫さんの森常治も思い出します。この人が訳したケネス・バーク著『動機の文法』(晶文社)は大学生時代に読み、とても刺激を受けました。


鴎外関連の人物にはいい名前がついています。


於菟(おと)、真章(ますく)、富(とむ)、礼於(れお)、樊須(はんす)、杏奴(あんぬ)、類(るい)……。どうでしょう。お子さまの命名の参考になりますでしょうか。


いろいろ書きましたが、蘊蓄がないのでこのブログでは蘊蓄を語る気はありません。たまたま知っていることを書きました。ご託としてご理解ください。



新潮文庫 恋人たちの森 (改版)

愛される少年。愛する男。男同士を嫉妬しながら少年を母のように抱く少女。そして、恋人を美少年の魅力から取り戻そうとする黄昏の

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講談社文芸文庫 父の帽子

電子書籍ストアKinoppy、本や雑誌やコミックのお求めは、紀伊國屋書店ウェブストア! 1927年創業で全国主要都市や海外

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動機の修辞学

「修辞」をキーワードに、アリストテレス、キケロにはじまり、ダンテ、マキアヴェリ、パスカル、シェイクスピア、マルクスらをへて

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あと、マリモといえば、なぜか(深い意味はありません、というか内輪ネタで恐縮なのですが)ゼロの紙さんを想わずにはいられません。あれよあれよ感のある意表を突く展開の文章、息をのむ言葉の身振りで読者を魅了する才能豊かな書き手です。



noteに戻ってきて、またゼロさんの文章が読めるようになり嬉しく思っています。


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作業服の日――。


作業着や仕事用の制服を見ると切なくなるのは私だけでしょうか。


誰かが着ている姿というより、脱ぎ置かれた衣類を目にするとぐっと来るのです。物には魂が宿っている気がしますが、こういう感情をフェティズム、物神、アニミズム、汎心なんて小賢しげな言葉で片づけたくはありません。


脱ぎ置かれた衣服は、持ち主がそばにいないだけに物悲しく感じられるのかもしれません。ましてや何らかの労働や作業のためにまとわれる服はお洒落で着るのではなく、着せられるものだと私が思い込んでいるからとも考えられます。お仕着せという古い言い方を思い出します。


四年前に亡くなった母の衣類のうち、かつて市役所の職員として母が身につけていた上着の制服だけがなかなか処分できません。


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八百屋お七の日――。



八百屋お七 - Wikipedia

ja.wikipedia.org

お七はいわゆる放火犯ですが、今日はその命日らしいのです。ここでは、蘊蓄なしの「今日は何の日」を書いておりますので、蘊蓄は上のウィキペディアの解説に丸投げいたします。


かつてミステリーと犯罪小説を書こうとしていた時期がありました。先行する作品だけでなく、警察という組織や警察の行う各種の捜査、過去の事件の記録、法医学、刑法、犯罪心理学といった分野の勉強をしていたのです。


放火事件について覚えていることに、「火をつけるとすっとするのです」という犯人の証言があります。


この種の心理に関する蘊蓄は以下の資料をご覧ください。


衝動制御障害 - Wikipedia

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やっていけないことや反社会的な行為をするとすっとしたり快感を覚える人がいる。このことに、私は興味があります。別にそうした行動を推奨しているわけではありませんので、ご了承願います。


神話や伝説や説話をはじめ、小説(童話でさえも)、映画、演劇、テレビドラマ、漫画、アニメ、音楽、絵画という具合に、ありとあらゆるジャンルで反社会的行為や犯罪が扱われてきました。


広義のミステリーが古今東西において大盛況なのは、誰もがそうした欲求をかかえているのだという見識もあちこちで見聞きします。つまり、フィクションとしてのミステリーを楽しむことが、暗い欲求のはけ口になっているという考えですね。


浮世草子、歌舞伎、浄瑠璃、落語、漫画、映像作品、音楽作品……。八百屋お七が、いわばメディアミックスとして、この国で扱われてきたことを見ると、「暗い欲求のはけ口」説を支持したくなります。







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風信子忌――。


風信子と書いて「ヒヤシンス」と読むなんて知りませんでした。立原道造も知りません。


風信子(ヒアシンス)忌とは - コトバンク

デジタル大辞泉プラス - 風信子(ヒアシンス)忌の用語解説 - 詩人・建築家の立原道造の忌日。3月29日。名称は自身の詩集

kotobank.jp


こうなったらもっと恥をさらしますが、「風信子」は人名でひょっとして古屋信子の本名かなあと思っていましたし、「風信子忌」をネットで調べていて立原道造という文字を目にした瞬間立原正秋の本名かと思った次第です。無知は無恥であると改めて痛感しました。



立原道造 - Wikipedia

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立原正秋 - Wikipedia

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中原中也 - Wikipedia

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立原道造の写真を見て中原中也と似ていると感じたのが、せめてもの救いじゃないか(詩人がらみで)と妙な自己満足を覚えましたけど、詩に詳しい方々から顰蹙を買うのは必至。何しろ、詩にはめちゃくちゃ疎いのです。


ところで、古屋信子についての解説がウィキペディアにないのはどういうことなのでしょう。いささかむっとしているというか、納得がいきません。ちくま文庫の『古屋信子集 生霊 文豪怪談傑作選』を読んでファンになったのです。


ちくま文庫 吉屋信子集 生霊—文豪怪談傑作選

小女小説から家庭小説、歴史小説まで不朽の名作を数多く遺した吉屋信子は、戦後の一時期、憑かれたように怪談風短篇の筆を執った。

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このシリーズは気に入っていて、『泉鏡花集 黒壁 文豪怪談傑作選』、『川端康成集 片腕 文豪怪談傑作選』を持っています。



ちくま文庫 泉鏡花集 黒壁—文豪怪談傑作選

明治大正昭和の三代にわたり妖艶怪美の世界をひたむきに追求した泉鏡花は、文芸としての怪談を極めた巨匠と呼ぶにふさわしい。三百

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ちくま文庫 川端康成集 片腕—文豪怪談傑作選

日本初のノーベル文学賞に輝いた川端康成は、生涯にわたり幽暗妖美な心霊の世界に魅入られた作家であった。一高在学中の処女作「ち

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